DISCOGRAPHY
SINGLE
ある日街頭で見かけたのは、懐かしい魔法少女アニメだった。
子どもの頃に観た魔法少女に、自分を少し重ねるのだった。
6th (Last) Single - 発売未定
魔法少女
梓はひとりで歌うことが不安だった。
失敗して深酒をする自分が現実のように思えていた。
しかし、遠出をした非日常の夕焼けを見て「こんなんじゃだめだ!」と強さを取り戻した。
また、彼女にはもうひとつ強くなれるものがあった。
いつか買ったお気に入りの口紅であった。
お守りのような口紅を塗って、彼女はステージに挑むのだった。
浜林は色街のそばにある居酒屋で飲んでいた。
隣の難しい顔をした青年にふと話しかけた。
「今年、大学を卒業して就職するんです。
でも僕の好きな人は就職しないで…色街で働くと言うんです。
彼女は自分の考え方に自信があって、未来に希望を持っている。
彼女を見守るしかない。それで僕は苦しんでいるんです」
白河梨々香は街で挙動不審な若い男を見かけ、声をかけた。
「人を探しているんです。風俗嬢です」男は画像を梨々香に見せた。
黒髪ショートの知的で真面目そうな女の子だった。
「急にやめてしまったんです。手紙を渡そうとしていたのに」
梨々香は直感的に「手紙、見せてもらえない?」と男に聞いた。
その手紙は、浜林賢二郎によって3rdシングルの歌詞としてまとめられた。
子供の頃からずっと、カロナは出生の秘密を知りたくてしょうがなかった。
でもその秘密を知ると、家族が離れ離れになってしまうような気がしていた。
タロット占いをすると、必ず吊るし人のカードが出るのだった。
意味は「自己犠牲」。
秘密を知ろうとすることをこらえれば、家族はいままでどおり幸せに暮らせるのではないか。
そう考えていた。
しかしある日、家の掃除をしていた彼女は、父の部屋で分厚い日記を発見してしまう。
自分が生まれる前に書かれた日記だった。
彼女は読みたい衝動をこらえることができなかった。
そこには出生の秘密が書かれていて…
ある夏の静かな夜。
雫石カロナと白河梨々香は行きつけの小さな喫茶店でアイスカフェオレを飲んでいた。
客はほかに誰もいなかった。
店内にはジャズが流れていたが、マスターにジャズ喫茶というほどのこだわりはなかった。
入口のベルが涼やかに鳴った。「まだやってますか?」
ひとりの女がふらふらと入ってきた。
単色のワンピースを着た、色気のある女だった。
髪が乱れ、ずいぶん酔っているようであった。
彼女は席につくなり、吐き出すように話し始めた。
昭和歌謡を思い出させる、切ない物語を。