DISCOGRAPHY

SINGLE

ある夏の静かな夜。雫石カロナと白河梨々香は行きつけの小さな喫茶店でアイスカフェオレを飲んでいた。客はほかに誰もいなかった。店内にはジャズが流れていたが、マスターにジャズ喫茶というほどのこだわりはなかった。

入口のベルが涼やかに鳴った。「まだやってますか?」

ひとりの女がふらふらと入ってきた。単色のワンピースを着た、色気のある女だった。髪が乱れ、ずいぶん酔っているようであった。彼女は席につくなり、吐き出すように話し始めた。昭和歌謡を思い出させる、切ない物語を。

1st Single - 2020.11.28

綴じ紐

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子供の頃からずっと、カロナは出生の秘密を知りたくてしょうがなかった。でも、その秘密を知ると家族が離れ離れになってしまうような気がしていた。

タロット占いをすると、必ず吊るし人のカードが出るのだった。意味は「自己犠牲」。

秘密を知ろうとすることをこらえれば、家族はいままでどおり幸せに暮らせるのではないか。そう考えていた。

しかしある日、家の掃除をしていた彼女は、父の部屋で分厚い日記を発見してしまう。自分が生まれる前に書かれた日記だった。彼女は読みたい衝動をこらえることができなかった。そこには出生の秘密が書かれていて…

2nd Single - 2021.3.13

オムライス - 雫石カロナ

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雪がちらちらと舞う午後、白河梨々香はコンビニから帰る途中だった。
ふと、挙動不審な男が目に入ってきた。まだ20歳になる前か、あどけなさが残っていた。

梨々香は遠慮なく「なにしてるんですか」と声をかけた。
「人を探しているんです。女の子を。風俗嬢です」といって、男は持っていた端末で画像を梨々香に見せた。

「かわいい……子」黒髪ショートの、知的で真面目そうな女の子だった。男と同じくらいの歳に見えた。
「急にやめてしまったんです。本気で好きだったのに。それで彼女を探し歩いているんです」

「全嬢システムのデータベースを検索してみましょう。もしかして、検索できるの知らなかった? 全風俗嬢管理運用システム」梨々香は自分の端末を取り出し、男から聞いた情報を入力した。男は梨々香の手元を覗き込むようにした。

「いない――やめた人でも記録は残ってるはずなのよ。もしかしたら、無許可嬢だったのかもしれない。なんらかの方法で検挙をくぐり抜けて」
「――いまごろ外の世界で自由にやってるのかもしれませんね。仕方ないです――すごくつらいですけど」

3rd Single

銀塩

発売未定

僕の腕のなかに抱きしめた華奢なからだ

ほかの誰かに抱かれんのだとしたら

君の好きな人であってほしいと願う

僕は消え去るのが本当だ


世界から剥がした10の欠片を見て

僕は世界を知ろうとしてた

君を救うべきなのは僕じゃなくて

君を貶める人たちだ


いつもの快楽に身をゆだねてるとき

なにを考え 目を閉じてるの

僕は都合がいいから いまだけは

自分のことだけだったらって思う


若さと時間を投げ売らなくても

目指すものや日々の暮らしを手に入れられる

それが理想だ 君は利口だ

今日も無邪気そうに話すんだろう

それがどんなに傷つくか 知ってるつもりなんだ


からだ重ねるほど目標は近くなる

いまも誰かの腕のなかにいるの?

それがいちばんなんだ 正しいことなんだよ

僕は消え去るのが本当だ


君からこぼれた10の言葉を聞いて

君のすべてを知ろうとしてた

でもそれだけで知ることができてたら

もう僕はここにいないだろう


欲望を糧にする卑しい女だと

感情を操作しようとしても

気休めにしかならない

また会えば すべてが引き戻されてしまう


儚さ美しさを売らなくても

知りたいことや憧れを手に入れられる

それが理想だ 君は利口だ

今日も別れ際に笑うんだろう

それがどんなに傷つくか 知ってるつもりなんだ


僕の腕のなかに抱きしめた華奢なからだ

ほかの誰かに抱かれんのだとしたら

君の好きな人であってほしいと願う

僕は消え去るのが本当だ


平気な顔して 気楽にやってるのかなんて

ちょっと妬んだりしてた

気まぐれでみんな さらってくんだなんて

嫉んだりしてた

きっと僕は要らない 貶めるだけで救えやしない


からだ重ねるほど目標は近くなる

僕の心は締めつけられるけれど

それがいちばんなんだ 正しいことなんだよ

君はこの街から出ていった